ガンプラの立ち上げ塗装とは?|黒・グレー・白立ち上げのエアブラシ塗装を実例解説

02 PAINTING TECHNIQUES / GRADATION PAINT

ガンプラの立ち上げ塗装とは?

下地の明暗を完全に消さず、色を少しずつ重ねて立体感を作る塗装方法を、MGトールギスⅡ、MGグフ Ver.2.0、高機動型シャア専用ザク、MGゴッグ、MG νガンダム Ver.Kaの実例から解説します。暗い下地から基本色を立ち上げる方法だけでなく、白立ち上げの上からクリアカラーを重ねる応用も扱います。

私がガンプラの全塗装でよく使っているのが「立ち上げ塗装」です。黒・グレー・マホガニーなどの下地を影として残しながら基本色を重ねる方法のほか、グレー下地から白で明暗を作り、その上へクリアカラーを重ねる方法も実際の制作で使っています。

この記事での「立ち上げ塗装」
特定の下地色だけを指す言葉ではなく、下地や中間色で作った明暗を利用して面に陰影を残す塗装方法として扱います。「黒立ち上げ」だけに限定せず、グレーやマホガニーからの立ち上げ、白立ち上げ+クリアカラーも含めて紹介します。

立ち上げ塗装は何をしているのか

ベタ塗りではパーツ全体をほぼ同じ明るさに仕上げます。立ち上げ塗装では、下地を完全に隠さず、面の中央を明るく、縁や奥まった部分を暗く残します。これによって、同じ一色でも面の起伏や奥行きを感じやすくなります。

01サーフェイサー
02下地色を確認
03面の中央から吹く
04外側へ広げる
05陰影を残して止める

ポイントは「全部を同じ色になるまで吹かない」ことです。塗料を重ねすぎると、せっかくの下地が消えて普通のベタ塗りに近づきます。

立ち上げ塗装には複数の組み立て方がある

暗色下地黒・濃いグレーなどを影として残す基本色を中央から重ね、縁や奥まった部分に暗さを残す。
中間色下地グレーなどから明るい色へ立ち上げる白や淡色で陰影をコントロールしやすい。
暖色下地マホガニーなどを影として利用する赤や茶系で、黒とは違う暖かい影を作れる。
白立ち上げ白で明暗を作ってから透明色を重ねるMGグフ Ver.2.0では、白立ち上げの濃淡をクリアブルーの濃淡へ変換した。

私が普段使っているエアブラシ設定

普段はタミヤ HGエアーブラシIII スーパーファイン 0.2mmを使い、エア圧はおよそ0.1MPaで塗装しています。これは絶対的な正解ではなく、私の制作環境で使っている基準です。

細吹きしやすいことが重要
立ち上げ塗装では、広い面を一気に塗りつぶすより、狙った場所へ少しずつ色を重ねる場面が多くなります。ノズル径、塗料の希釈、距離、エア圧を組み合わせて、自分がコントロールしやすい状態にします。

実際に使用しているエアブラシ立ち上げ塗装では狙った位置へ少しずつ色を重ねたいので、普段使っている0.2mmのHG エアーブラシIII スーパーファインが扱いやすいと感じています。

CASE 01 / MG TALLGEESE II

陰影を「効かせすぎない」立ち上げ塗装

MGトールギスⅡでは、以前制作したトールギスⅠと並べることを前提に、工程と陰影の強さをほぼ揃えています。下地はクレオスのサーフェイサー1000(グレー)。ホワイトはクールホワイトをベースに、部分的に灰色9号を使って面の情報量を加えました。

MGトールギスⅡのホワイト外装を立ち上げ塗装した状態
白に近い灰色9号を使い、強すぎない明度差で立体感を作った例。
MGトールギスⅡのブルー外装を立ち上げ塗装した状態
ライトブルーを中心に、コバルトブルーで変化を付けたブルー部分。

ブルーはやや軽めのライトブルーをメインにし、部分的にコバルトブルーで塗り分けています。Ⅱはブルーの面積が広いため、ホワイト側まで陰影を強くすると全体が騒がしくなります。そのため、白はあえて「効かせすぎない」方向で仕上げています。

立ち上げ塗装は、陰影を強くするためだけの技法ではない
どの程度残すかを機体全体の配色に合わせて調整することも重要です。トールギスⅡでは、Ⅰと並べたときの統一感を優先し、陰影を控えめにしています。
CASE 02 / MG GOUF Ver.2.0

白立ち上げの明暗を、クリアブルーの濃淡へ変える

MGグフ Ver.2.0では、グレーのサーフェイサーを基準にして、装甲の中央へ白を重ねながらエッジ側にグレーを残しました。ここまでは「グレーから白へ立ち上げる」工程です。

グレーサーフェイサーを吹いたMGグフ Ver.2.0
まずグレーサーフェイサーで基準となる暗さを作ります。
グレー下地から白立ち上げを行ったMGグフ Ver.2.0
装甲中央へ白を置き、エッジ側にはグレーを残した状態。
白立ち上げの上からクリアブルーを重ねたMGグフ Ver.2.0
透明な青を重ねると、白い部分は明るい青、グレー部分は深い青として残ります。

その上からクリアブルーとGXディープクリアブルーを重ねました。クリアカラーは下地を完全に隠さないため、白立ち上げで作った明暗が、そのまま青の濃淡として見えてきます。

「暗い下地から基本色を立ち上げる」だけが立ち上げ塗装ではない
グフでは、いったん白で明暗を作ってから透明色を重ねています。最終色そのものを立ち上げるのではなく、最終色の下に明暗を仕込んでおく考え方です。

完成時にはウェザリングまで含めて明暗を見る

クリアブルー塗装直後はかなり明るい青に見えました。その後、スミ入れ・ウォッシング・ウェザリングを加えることで青が落ち着き、砂漠戦仕様としてまとまりました。立ち上げ塗装の強さは、塗装直後だけでなく後工程まで想定して調整する必要があります。

CASE 03 / HIGH MOBILITY ZAKU

マホガニー下地から赤を立ち上げる

高機動型シャア専用ザクでは、サーフェイサーマホガニーを下地にして、胴体は「あずき」、手足は「MSレッド」を重ねました。暗い茶色を縁に残すことで、赤をそのままベタ塗りするより深い色合いになっています。

マホガニー下地から赤を立ち上げ塗装した高機動型シャア専用ザクのパーツ
マホガニーを下地にして、赤系塗料を面の中央から重ねた実例。
立ち上げ塗装後の高機動型シャア専用ザク
暗い下地の影響で全体の赤は深めに仕上がりました。
実際に感じた失敗
狙っていた以上に赤が深くなりました。暗い下地から立ち上げる場合、完成色は想像より暗くなることがあります。今なら、もう少し明るい赤を選ぶか、明るい側の塗り重ねを強めます。

この作例で使った下地赤系の立ち上げでは、冷たい黒ではなく暖色寄りの影を残したかったため、Mr.マホガニーサーフェイサー1000を使用しています。

立ち上げ塗装の吹き方を動画で確認

面の中央付近から塗料を乗せ、最初から完全に発色させず、数回に分けて外側へ塗装範囲を広げています。動画では「中央から吹き始める位置」「一度で塗りつぶさないこと」「縁へ下地をどの程度残して止めるか」を確認してください。

CASE 04 / MG GOGG

ブラック・グレー下地を残しながら基本色を作る

MGゴッグでは、グレー部分にブラックサーフェイサーを使い、そこから濃いグレーを立ち上げました。他の外装はグレーサーフェイサーを使い、下地を少し残しながらそれぞれの基本色を重ねています。

立ち上げ塗装を進めているMGゴッグ
下地の暗さを残しながら基本色を重ねたMGゴッグ。
立ち上げ塗装の上から水中迷彩を加えたMGゴッグ
立ち上げ塗装をベースに、さらに白っぽいグレーで水中迷彩を追加。

立ち上げ塗装は次の表現の下地にもなる

ゴッグでは陰影を作って終わりではなく、その上に水中迷彩を追加しました。基本色の明暗を作ってから別の塗装表現を重ねることで、単色の迷彩とは違う情報量を持たせられます。

CASE 05 / MG ν GUNDAM Ver.Ka

白と濃色では、陰影の残り方が違う

νガンダムでは、白い装甲はグレーサーフェイサー1200から灰色9号、ネービーブルーはブラックサーフェイサー1500から立ち上げています。同じ考え方で塗っても、完成時の見え方はかなり違いました。

白い装甲を立ち上げ塗装したνガンダムのシールド
白はグレー下地を端部に残し、中央を明るくすることで陰影が見えやすい。
白とネービーブルーを立ち上げ塗装したνガンダムのビームライフル
濃色部分はブラック下地からネービーブルーを重ねています。
基本塗装を終えたMG νガンダム Ver.Ka
全身を組んで、白・グレー・濃色の陰影をまとめて確認。
濃色は後工程で陰影が沈みやすい
ネービーブルーは塗装直後には明暗が見えていましたが、つや消しクリア後には差がかなり分かりにくくなりました。一方、白とグレーでは狙った陰影を比較的残せています。濃色では完成時に残したい差を、塗装時に少し強めに作る必要があると感じました。

下地色は何を選べばいい?

ブラック濃い影を作りやすいネービーブルー、グレーなど。完成色が暗くなりやすいので注意。
グレー明暗差をコントロールしやすい白や淡色で使いやすく、陰影が極端になりにくい。
マホガニー暖色系の影になる赤や茶系で冷たい黒影を避けたいときに使いやすい。
白+透明色明るさを先に作ってから着色するクリアカラーを通して下地の明暗を色の濃淡へ変換できる。

「立ち上げ塗装=黒下地」と決める必要はありません。最終的に作りたい色と、影として残したい色、さらに上に重ねる塗料の隠ぺい力から下地を選びます。

うまくいかないときに確認すること

1. 下地が全部消えてしまう

基本色を重ねすぎています。最初から完成色にしようとせず、少しずつ発色を確認して止めます。

2. 中央だけが丸く明るく見える

同じ場所へ吹き続けると、面の形より「白い丸」が目立ちます。面の形状に沿って吹く範囲を広げます。

3. 濃色の陰影が完成後に消える

νガンダムで経験したように、つや消しクリアなど後工程で差が沈むことがあります。濃色では塗装直後に少し強く感じる程度まで明度差を作る方法もあります。

4. クリアカラーを重ねたら想定より明るくなった

グフでは白立ち上げの上へクリアブルーを重ねた結果、立ち上げ塗装としては想定より明るい印象になりました。透明色は下地の明るさを強く拾うので、白の範囲と明るさを先に調整します。

5. 陰影が強すぎて全体が騒がしい

トールギスⅡのように、配色によっては陰影を控えめにした方が全体がまとまります。立ち上げ塗装は、強ければ良いわけではありません。

初心者が試すなら

最初から大型キット全体で試すより、スプーンや余ったパーツ、シールドのような比較的広い面で練習すると分かりやすいです。下地を吹き、面の中央から少しずつ基本色を重ね、「どこまで吹くと下地が消えるか」を一度確認すると感覚をつかみやすくなります。

一番重要なのは、止めるタイミング
立ち上げ塗装は、塗り足す技法であると同時に「これ以上吹かない」と判断する技法でもあります。

この技法を使用した作品

制作記事は完成品紹介だけではなく、この技法を実際に使った作例として相互に参照できるようにします。それぞれ下地色や完成色、後工程が違うので、立ち上げ塗装の幅を比較できます。

まとめ|下地を残して、色に立体感を作る

立ち上げ塗装では、サーフェイサーや下地色を完全に隠さず、面の中央へ色を重ねながら陰影を作ります。ブラック、グレー、マホガニーなど下地を変える方法だけでなく、白立ち上げで明暗を作ってから透明色を重ねる方法もあります。

トールギスⅡでは陰影を控えめにして配色とのバランスを取り、グフでは白立ち上げの明暗をクリアブルーの濃淡へ変換し、高機動型ザクでは暗い下地で赤が深くなり、ゴッグでは陰影の上に水中迷彩を重ね、νガンダムでは白と濃色で陰影の残り方が違うことが分かりました。実際の制作結果を見ながら、自分が欲しい明暗差を決めていくのが一番確実です。

暗色での立ち上げ塗装作例:MG ジェスタ

黒下地からティターンズブルー2を立ち上げ塗装したMGジェスタ

サーフェイサーブラックとティターンズブルー2の明度差を抑え、装甲中央へ少しずつ発色させながらエッジに黒を残した作例です。暗いブルーでも立体感を成立させる工程は、制作まとめからDETAIL 03へ進む構成で確認できます。